令和2年9月30日は、認定医療法人制度改革にとってひとつの重要な期日となっております。
この日までに厚生労働省による認定医療法人としての認定を受けることによって、将来発生することが想定される医療法人への出資持分(株式会社でいうところの株式のようなもの)に対する多額の相続税の心配がなくなるかもしれないのです。
ことの始まりは平成18年度改正医療法による医療法人制度改革で、それ以降に新設される医療法人については出資持分の存在を認めないというものでした。
医療法では医療機関の非営利性が大原則で本来は医療法人の残余財産の帰属先が出資者個人であってはならないことから、このような制度改革が行われましたが、それ以前に設立された医療法人の出資持分については「当分の間」はそのまま黙認するが持分なしへの自主的な移行を促すといった曖昧なものでした。
そこで平成26年10月1日から平成29年9月30日の間に一定の要件を満たせば持分なし医療法人への移行を認定するという認定制度が始まったのですが、如何せん認定要件のハードルが高く、将来の相続税が安くなるのはよいが例えば同族親族役員等を3分の1以下としなければならないといった医療法人の経営の根幹にかかわる認定要件が盛り込まれておりこのようなことが足かせとなり厚生労働省の思惑どおりに移行が進まなかったのが現状でした。
そこで今回認定の期限を平成29年10月1日から令和2年9月30日まで3年間延長してさらに認定要件を大幅に緩和することによって持分なしへの移行がかなりの法人で進むのではないかと期待されております。
そもそも持分なしへ移行する行為自体は定款を変更する程度のことなのですが、なぜその行為にわざわざ厚生労働省の認定といういわばお墨付きをもらわなければならないのかというと、そこに贈与税の問題があるからに他ならないのです。
通常贈与税は個人に課税されるものなのですが、医療法人の出資持分を出資者全員が放棄した場合、なんと医療法人に贈与税がかかることとなるのです。
だからこそ多くの医療法人は持分なしへの移行に慎重にならざるを得ないのかも知れません。だからといってこのまま無策でいると多額の相続税が、移行すれば多額の贈与税が・・・といったジレンマに陥っていた多くの持分あり医療法人にとっては千載一遇のチャンスであり、且つそれはファイナルアンサーになるのかも知れません。
具体的な認定要件の緩和については次回へと続きます。
埼玉本部 菅 琢嗣