この数年、黒ウーロン茶や黒七味、黒八橋(京都だけ?)、黒羽毛布団(私の実家だけ?)など、黒い商品をよく見かけますね。
ちなみに私は子供の頃から黒が好きで、着るものやお道具、年頃になってからはアクセサリに付いている石なども自分で買うのは黒いものがほとんどです。
何が好きかと聞かれると、どんな色とも合わせやすいし、マットでも光沢があってもどんな素材でも美しいし、そもそも好きな服やプロダクトのデザイナーが黒を多く使うから、という現実的な大人になっても選ぶための理由がたくさんあるのですが、多分いちばん気に入っているのは「黒」という色の持つ不変性です。
他の色と混ぜた時に中間色を生み出さず必ず黒にしてしまう存在感と、うっかり混ざっておいたらいいのに混ざらない潔さ(または頑固さ?)が、私にとって最も愛すべき黒の性質である気がします。
もちろんこの理由はあとづけですが、思い起こせば小学校1年生のときの曇りの日の写生大会で、青色+白色に黒色の絵の具を混ぜて変な空を描いてしまった少女だった私がそう考えさせるのかも知れません。
ところで、日本の染物職人が生み出す深い「黒」は、海外では再現することが不可能な技術だそうです。
例えば紋付はきわめて濃い黒色が高級品とされていて、これ以上黒くならない色の極限としての黒なのだと聞いたことがあります。
頑ななのか、それとも限りなくしなやかなのか、いずれにしても触れる何者をも取り込みつつ自分の「色」を失うことのない黒の在り方は、現在のようにめまぐるしく変化する時代の中で自分がどんな人間でいたいかと考えたとき、自分の子供にどのような人生を歩んで欲しいかと問うときに、思わず感服して見習いたくなるものです。
京都本部 籠谷夕可子