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昨今の民法改正にあたり配偶者居住権の創設に注目が集まっておりますが、その他に「特別寄与制度」というものも創設されました。
民法では、今までも「寄与分」という制度が存在しておりましたが、相続人にのみ認められた制度で、「特別の寄与」という被相続人への生前の貢献度についてもただ単に親の面倒を見ただけでは寄与分として認められず、それなりにハードルの高い制度でした。
今回令和元年7月1日より施行となった「特別寄与制度」は相続人の配偶者のような義理の親の介護をしてきたが相続人以外の第三者であるため寄与分の主張ができなかった相続人以外の親族に限定されているところが大きな特徴で、特別の寄与の範囲も無償での「療養看護その他の労務の提供」と限定的に絞られております。
では、この特別寄与料の主張が相続人によって了承された場合の相続税の申告等はどのようになるかというと特別寄与料を取得した者は被相続人より遺贈により取得したものとみなして相続税の計算をすることとなります。
逆に特別寄与料を払った相続人はそれぞれの負担に応じた額が相続税計算上の債務控除の対象となります。
注意点としては家庭裁判所への申立て期限は特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6カ月以内か相続開始の日から1年以内のいずれか早い日となっており、まごまごしているうちに請求できる期間が過ぎてしまうこともあります。
そもそも特別寄与料を請求する時点ですでに揉めていることが想定されます。できることならば生前のうちに特別寄与者となりうる者に遺贈することを遺言書に記載しておくだとか養子縁組、生前贈与、生命保険の受取人に指定するといった方法も検討する余地がありそうです。
埼玉本部 菅 琢嗣
また一つ保険の節税商品が消えてゆくことになります。
令和3年7月1日以後、所得税改正基本通達36-37における保険契約の権利について、低解約返戻金型保険及び復旧することのできる払済保険など解約返戻金の額が著しく低い保険等については名義変更時の評価が名義変更時の「解約返戻金の額」から名義変更時の「資産計上の額」に変わることになります。
いわゆる「名変プラン」と呼ばれるこの節税スキームは保険の契約年数により大幅に解約返戻金の額が変動することに着目したもので、解約返戻金相当額が低く設定されている時期に法人から個人(役員等)へ名義変更し、その後すぐに解約返戻金が大幅に上昇した時点で解約することにより節税メリットがありました。
ここのところ令和元年7月に改正された法人税基本通達9-3-5の2と同様、解約返戻金に着目した節税スキームが矢継ぎ早に封じられた格好となったのです。
以前から課税庁側もこのような法人から個人へ保険商品を名義変更するような節税スキームについては経済的な合理性に乏しいといった議論はあったのですが、通達通りに解釈すると課税上問題がないため、せいぜい「総則6項」の発動を匂わせる程度でした。
それが次第にこのような保険商品の競争が保険会社間で過熱し、保険本来の目的から逸脱してしまうことで課税庁側も看過できなくなったといったところなのでしょう。
ちなみにこのような商品が個人へ名義変更後に相続が発生した場合であっても相続税評価は「解約返戻金相当額」のままで評価されることが認められるようです。
法人から個人へ名義変更し、その後解約返戻金が上昇した時点で解約するという一連のスキームは最初から完結することが前提であるためそれを塞ぐ通達が必要だったのですが、相続の場合、さすがに解約返戻金上昇のタイミングで人の死は予測できないからなのでしょうか・・・。
埼玉本部 菅 琢嗣