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地積規模の大きな宅地の論点整理

 平成30年1月1日より、財産評価基本通達24-4いわゆる広大地の評価が廃止となり、新たに財産評価基本通達20-2地積規模の大きな宅地の評価が創設されました。
 相続税の申告期限が10か月であることを前提とするならば、この新通達を実務において使われるのは、今年の夏以降くらいになることでしょう。その前に平成29年10月3日に国税庁より出された「情報」をもとにその細部の論点及び誤りやすい注意点を整理してみたいと思います。
・面積要件
 三大都市圏は、500㎡以上、それ以外は1000㎡以上となっており、国税庁から公表された三大都市圏にあたる市区町村に該当するかの確認が必要となります。特に市区町村のうち「一部」となっている地域については各自治体にて確認が必要となります。
・区域制限
 市街化調整区域については、原則適用が受けられませんが都市計画法34条10号11号区域については、市街化調整区域の制限から外れることとなります。ただし、10号11号区域に該当したとしても自治体によっては宅地分譲に係る開発は認められないこともありますので、各自治体にて確認が必要となります。
・用途地域制限
 都市計画法8条における工業専用地域については、原則適用が受けられませんが評価対象地が2以上の用途地域、例えば工業専用地域と準工業地域にまたがっている場合は工業専用地域が半数以下であれば、この段階ではその地域は準工業地域に所在するものとみなされ適用制限からは外れることとなります。ただし、準工業地域であったとしても、地区区分が普通住宅地区及び普通商業・併用住宅地区に該当する可能性が低いので結局適用から外れる可能性は高いのですが・・・。
・指定容積率制限
 容積率が400%(東京都の特別区内は300%)以上の地域については原則適用が受けられません。ここで言う容積率とは、建築基準法52条1項における「指定容積率」であり、前面道路幅員の制限に基づく同法52条2項の「基準容積率」については適用が認められておりません。ただし、「情報」によると評価対象地が指定容積率の異なる2以上の地域にまたがる場合には加重平均による容積率により判定するといういわゆる同法52条6項については適用されるそうで、混乱しないよう注意が必要です。
 上記において地積規模の大きな宅地に該当した場合、規模格差補正率と財産評価基本通達20-6容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価は併用可能となりますので注意が必要となります。
・路線価地域制限
 路線価地域については、普通住宅地区及び普通商業・併用住宅地区のみ適用対象となり、それ以外の地区区分については適用対象外となります。
ただし、評価対象となる宅地の正面路線価が2以上の地区にわたる場合は、半数以上に属する地区が全部所在する地区とみなされます。
・倍率地域について
倍率地域の場合、近傍宅地における固定資産税評価額をもって1㎡あたりの価額を基に計算されることとなりますが、近傍宅地の価額においては3年に一度正規に改訂される価額を基に評価されることとなり、仮に毎年改訂された場合の評価額である「簡易改訂」については適用されないことも留意する必要があります。
埼玉本部 菅 琢嗣


生命保険金等の税務における論点整理

 個人における生命保険金等の税務は、その保険料を支払った人、その保険金を受け取った人が異なるごとに課税関係が変わってきます。
 例えば、被保険者の死亡により死亡一時金を受け取る場合、その保険料の負担者が被相続人ならば相続税、受取人なら所得税(一時所得)、被相続人でもなく受取人でもない第3者であれば贈与税が保険受取人に課税されることとなります。
 ここで問題となるのが、保険料の負担者=契約者とは限らないということです。契約書上には被保険者、保険契約者、保険金受取人は記されていますが、肝心の保険料負担者については何も明記されておりません。厳密にいうと保険の契約者が誰であるかは、課税上は影響のないことで、それよりも実際に誰がその保険料を支払ったかという「真実の保険料負担者」を把握することが求められます。
 本来は年末調整などでも同じことが言えまして、国税庁から毎年配布される「年末調整のしかた」にもその辺については「生命保険料控除は所得者本人が支払ったものに限る」とはっきり明記されておりますが、実務の現場ではすべての給与所得者の年末調整にあたりそこまで把握しきれないのが現状であり、恐らく課税庁側もそこまで要求していないのかも知れません。
 だが、最終的にその保険料を受け取る段階、いわゆる出口課税にあたっては「真実の保険料負担者」が誰なのかを通帳の動きなどからしっかりと見極める作業が必要となります。
 保険の負担者、受取人、契約者すべて中途にて変更することもあり得ることから、相続開始時点においての保険の被保険者、受取人、契約者を表面の契約書上形式的に追っていると例えば負担者が途中で受取人から被保険者へ変更していた場合、その死亡一時金の全額を相続財産にしてしまうといったミスが起こる可能性もあります。
 過去の裁決事例などを見ても真実の保険料の負担者は一体誰なのか、それによってその保険の一時金は相続人の相続財産なのか一時所得なのかを争われた事例は多く、今でもこのような争いごとは多く見かけます。
 これは、毎年の保険料相当額を贈与によって支払った場合も注意が必要となります。昭和58年9月国税庁事務連絡によると保険料の支払い能力がない未成年者等であってもその保険料の支払資金を贈与された場合、保険料負担者として認めるとされました。
 ただし、毎年の贈与契約書を作成しているとか、その保険についての確定申告、年末調整等による生命保険料控除が当該贈与との辻褄が合っているとか、当該贈与の事実に即した贈与税申告書は提出されているかといった贈与事実の心証を得られるものでないと認められないこともあるので注意が必要です。過去の裁決事例でも親権者の口座より直接保険料が支払われたケースについては、その贈与が認められなかったといった事例もあり、贈与したい保険料について通帳にしっかり跡を残すといった贈与したという「はっきりとした意思」を課税庁側へのアピールとしてクドいくらいに意図的に殊更な行動をとるべきなのでしょう。                         
埼玉本部 菅 琢嗣
 
 


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