もう、皆さん周知のことかと思いますが平成30年1月1日以降現行の広大地の評価(財産評価基本通達24-4)が廃止され、地積規模の大きな宅地の評価が新設(新評価通達20-2、以降の通達番号は1項ずつ後退する予定)されることとなる見込みとなりました。
現行の広大地評価は、評価に主観性が多く盛り込まれ鑑定評価やその通達の解釈の相違等の裁決事例の多さからわかる様に納税者側だけでなく課税庁側も相当苦心していたことは想像に難くないところでした。
それだけでなく、市場価額と相続税評価額の差額に着目し、地形のよい広大地を生前に購入し、相続後に売却するといった一種のタワマン節税に似た相続対策が横行していたことも課税庁側とすると苦虫を噛み潰す思いであったこともまた想像に難くないところでした。
このような過去の経緯からしても今回広大地評価の「改正」ではなくわざわざ「廃止」して「新設」するという、この主観性のかたまりだった広大地評価から完全決別したいという課税庁側の強い意気込みすら感じ取れるように思われます。
今回の改正について今年の12月31日までに想定される動きを5つのカテゴリーに区分してみました。
① 現行広大地評価は適用可で新通達は適用不可
② 現行広大地評価は適用可で新通達も適用可
③ 現行広大地評価は適用可能性50%以下で新通達は適用不可
④ 現行広大地評価は適用可能性50%以下で新通達は適用可
⑤ 現行広大地評価は適用不可で新通達は適用可
①②については、今年中に相続時精算課税を利用して広大地評価が適用可能な土地について生前贈与の検討も必要になりそうです。勿論相続時精算課税を利用した場合、その後暦年贈与ができなくなることも考慮する必要はあります。
③については、最悪広大地評価が相続税申告後否認されたとしてもどちらにせよ加算税等の課税のみなので納税者にリスクを説明したうえで通常通り状況によってはチャレンジする価値はありそうです。
問題は④で、仮にチャレンジして失敗した場合加算税等のみならず新通達の評価減についても捨てる結果となることからもあまり可能性が低いようであれば安全策をとって新通達の評価減を選ぶべきかも知れません。
⑤については問題なく来年までスルー。
新通達の評価については、例えば容積率の条件についても建築基準法52条1項(指定容積率)についてしか謳われてなく、基準容積率や容積率の加重平均については何も触れられておらず対象から外れることが濃厚であることから、これらも年内に贈与するか否かの判定において重要な判断材料となりそうです。
埼玉本部 菅 琢嗣
寄付者から受け入れた資産で、寄付者より資産の使途について制約が課されているものについては、指定寄付金として受け入れることになります。
指定寄付金として受け入れるか否かにより会計処理が異なります。そのため、寄付者の使途の指定が、どの程度具体的になされている必要があるかが問題となります。
この点、使途の制約については、例えば、「公益目的事業の○○事業に充当して欲しい」や「奨学金事業の奨学金の財源に充当して欲しい」と具体的に表現される必要があり、「公益目的事業に使ってほしい」というだけでは、一般には、使途の制約があるとは認められません。
寄附を受ける時点で、寄付者の意思を十分に確認し、明確にしてもらうことが必要となります(新たな公益法人制度への移行等に関するよくある質問(FAQ)問Ⅴ‐4‐12)。
公益法人が寄付を受ける際には、上記の点に注意する必要があります。
東京本部 小林
平成29年度税制改正の大綱において、相続税等の財産評価の適正化として相続税法の時価主義の下、実態を踏まえて広大地の評価について現行の面積に比例的に減額する評価方式から各土地の個性に応じて形状、面積に基づき評価する方式に見直すとともに、適用要件を見直すこととされました。
現行の「広大地補正率」から「規模格差補正率」への見直しで、相対的には補正率が下がり、個々の納税者にとっては不利となるケースも当然に生じると思われますが、一方、適用要件が明確化・簡素化されることによって、今まで適用できなかったマンション等の敷地、既に宅地として有効利用されている建築物の敷地、路地状開発することが合理的な宅地等であっても対象となることが考えられ、新たに減額の対象となる方が拡大すると思われます。
■要件の比較
「広大地」(見直し前)
・その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地であること。
・開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものであること。
・大規模工場用地に該当するものでないこと及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものでないこと。
「地積規模の大きな宅地」(見直し後)
三大都市圏においては500㎡以上の地積の宅地、それ以外の地域においては1,000㎡以上の地積の宅地で、次のいずれかに該当するものを除く。
・市街化調整区域(宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域を除く。)に所在する宅地
・工業専用地域(都市計画法8①一)に所在する宅地
・容積率が400%(東京都特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地
要件はとてもシンプルになりました。
平成30年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与のより取得した財産の評価から適用されます。
東京本部 根生隆行