平成30年度の税制改正大綱が昨年末に発表されました。
今回は、所得拡大促進税制に限定して、内容を記載したいと思います。
上乗せ措置や控除限度額については割愛させて頂いております。
※所得拡大促進税制
賃上げ及び人材投資に取り組む企業に対し、支援措置を強化するために下記の改正を行います。
★改正前
平成24年度の給与水準を基準事業年度として、
① 当該基準と比べて103%以上となっていること
② 給与の支給総額が前年度より増加していること
③ 平均給与が前年度の平均より増加していること
上記の①~③を全て満たしたら、基準年度の給与総額からの増額分×10%が税額控除となります。
つまり、平成24年度よりも3%給与アップしていて、かつ、前期の平均&総額よりも今期の支払が多い場合には、基準年度からの増加分の10%を税額控除ということですね。
★改正後(平成30年4月1日以降に開始する事業年度)
上記の①と②の要件は撤廃されています。
① 平均給与が前年度の平均より1.5%以上増加していること
上記①を満たせば、前年度の給与総額からの増額分×15%が税額控除となります。
以前と比べて、計算しやすく分かり易い制度になったと思います。
計算対象は、直近2年間継続勤務している社員となります。
役員、役員の親族、新入社員、退職者は除かれます。
平均給与の計算としては、給与とボーナスを合計した金額を12ヶ月で割って算出します。
「給与を上げたら税金安くする」、、、賃上げの推進策として非常に分かり易いと思います。
顧問先を訪問する時に、毎回のように人が見つからないというお言葉を頂きます。それは、顧問先だけでなく、会計事務所においても同様です。
実際に、厚生労働省のHPによると、有効求人倍率は平成21年度から現在に至るまで右肩あがりとなっています。更に平成25年度以降は同倍率が1を超えている状況です(求職者数<有効求人数)。
賃金の下方硬直性を考えると、余り大胆な賃上げは法人業績を圧迫させる恐れがありお勧めは出来ません。
ただし、良好な労使関係の構築は企業業績に直接反応しますし、最重要項目だと思います。
長文になってしまいましたが、最後までお読みいただき感謝します。
少しでも皆様のお役に立てたならば幸いです。
茨城本部 楢原 英治
平成30年1月1日より、財産評価基本通達24-4いわゆる広大地の評価が廃止となり、新たに財産評価基本通達20-2地積規模の大きな宅地の評価が創設されました。
相続税の申告期限が10か月であることを前提とするならば、この新通達を実務において使われるのは、今年の夏以降くらいになることでしょう。その前に平成29年10月3日に国税庁より出された「情報」をもとにその細部の論点及び誤りやすい注意点を整理してみたいと思います。
・面積要件
三大都市圏は、500㎡以上、それ以外は1000㎡以上となっており、国税庁から公表された三大都市圏にあたる市区町村に該当するかの確認が必要となります。特に市区町村のうち「一部」となっている地域については各自治体にて確認が必要となります。
・区域制限
市街化調整区域については、原則適用が受けられませんが都市計画法34条10号11号区域については、市街化調整区域の制限から外れることとなります。ただし、10号11号区域に該当したとしても自治体によっては宅地分譲に係る開発は認められないこともありますので、各自治体にて確認が必要となります。
・用途地域制限
都市計画法8条における工業専用地域については、原則適用が受けられませんが評価対象地が2以上の用途地域、例えば工業専用地域と準工業地域にまたがっている場合は工業専用地域が半数以下であれば、この段階ではその地域は準工業地域に所在するものとみなされ適用制限からは外れることとなります。ただし、準工業地域であったとしても、地区区分が普通住宅地区及び普通商業・併用住宅地区に該当する可能性が低いので結局適用から外れる可能性は高いのですが・・・。
・指定容積率制限
容積率が400%(東京都の特別区内は300%)以上の地域については原則適用が受けられません。ここで言う容積率とは、建築基準法52条1項における「指定容積率」であり、前面道路幅員の制限に基づく同法52条2項の「基準容積率」については適用が認められておりません。ただし、「情報」によると評価対象地が指定容積率の異なる2以上の地域にまたがる場合には加重平均による容積率により判定するといういわゆる同法52条6項については適用されるそうで、混乱しないよう注意が必要です。
上記において地積規模の大きな宅地に該当した場合、規模格差補正率と財産評価基本通達20-6容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価は併用可能となりますので注意が必要となります。
・路線価地域制限
路線価地域については、普通住宅地区及び普通商業・併用住宅地区のみ適用対象となり、それ以外の地区区分については適用対象外となります。
ただし、評価対象となる宅地の正面路線価が2以上の地区にわたる場合は、半数以上に属する地区が全部所在する地区とみなされます。
・倍率地域について
倍率地域の場合、近傍宅地における固定資産税評価額をもって1㎡あたりの価額を基に計算されることとなりますが、近傍宅地の価額においては3年に一度正規に改訂される価額を基に評価されることとなり、仮に毎年改訂された場合の評価額である「簡易改訂」については適用されないことも留意する必要があります。
埼玉本部 菅 琢嗣
個人における生命保険金等の税務は、その保険料を支払った人、その保険金を受け取った人が異なるごとに課税関係が変わってきます。
例えば、被保険者の死亡により死亡一時金を受け取る場合、その保険料の負担者が被相続人ならば相続税、受取人なら所得税(一時所得)、被相続人でもなく受取人でもない第3者であれば贈与税が保険受取人に課税されることとなります。
ここで問題となるのが、保険料の負担者=契約者とは限らないということです。契約書上には被保険者、保険契約者、保険金受取人は記されていますが、肝心の保険料負担者については何も明記されておりません。厳密にいうと保険の契約者が誰であるかは、課税上は影響のないことで、それよりも実際に誰がその保険料を支払ったかという「真実の保険料負担者」を把握することが求められます。
本来は年末調整などでも同じことが言えまして、国税庁から毎年配布される「年末調整のしかた」にもその辺については「生命保険料控除は所得者本人が支払ったものに限る」とはっきり明記されておりますが、実務の現場ではすべての給与所得者の年末調整にあたりそこまで把握しきれないのが現状であり、恐らく課税庁側もそこまで要求していないのかも知れません。
だが、最終的にその保険料を受け取る段階、いわゆる出口課税にあたっては「真実の保険料負担者」が誰なのかを通帳の動きなどからしっかりと見極める作業が必要となります。
保険の負担者、受取人、契約者すべて中途にて変更することもあり得ることから、相続開始時点においての保険の被保険者、受取人、契約者を表面の契約書上形式的に追っていると例えば負担者が途中で受取人から被保険者へ変更していた場合、その死亡一時金の全額を相続財産にしてしまうといったミスが起こる可能性もあります。
過去の裁決事例などを見ても真実の保険料の負担者は一体誰なのか、それによってその保険の一時金は相続人の相続財産なのか一時所得なのかを争われた事例は多く、今でもこのような争いごとは多く見かけます。
これは、毎年の保険料相当額を贈与によって支払った場合も注意が必要となります。昭和58年9月国税庁事務連絡によると保険料の支払い能力がない未成年者等であってもその保険料の支払資金を贈与された場合、保険料負担者として認めるとされました。
ただし、毎年の贈与契約書を作成しているとか、その保険についての確定申告、年末調整等による生命保険料控除が当該贈与との辻褄が合っているとか、当該贈与の事実に即した贈与税申告書は提出されているかといった贈与事実の心証を得られるものでないと認められないこともあるので注意が必要です。過去の裁決事例でも親権者の口座より直接保険料が支払われたケースについては、その贈与が認められなかったといった事例もあり、贈与したい保険料について通帳にしっかり跡を残すといった贈与したという「はっきりとした意思」を課税庁側へのアピールとしてクドいくらいに意図的に殊更な行動をとるべきなのでしょう。
埼玉本部 菅 琢嗣
公益法人会計において、一見似てはいるものの、明確に区別する必要があるものとして特定費用準備資金と資産取得資金があります。
特定費用準備資金(公益法人認定法施行規則18条)とは、将来の特定の事業費、管理費に特別に支出するために積み立てる資金をいいます。将来、費用として支出することが予定されていることから、公益目的事業比率の算定上、前倒し的に積立額をみなし費用として参入することが可能なほか、資金の使途が具体的に定まっていることから遊休財産額から除外されます。
資産取得資金(公益法人認定法施行規則第22条第3項第3号)とは、将来、公益目的事業やその他の必要な事業、活動に用いる実物資産を取得又は改良するために積み立てる資金をいいます。資産の取得又は改良を行った時点では資金から実物資産に振り替わるだけであるため、費用で計る公益目的事業比率の算定には積立額を算入することができませんが、資金の使途が具体的に定まっていることから遊休財産額から除外されます。
両資金とも、資金の目的である活動の実施や財産の取得又は改良が具体的に見込まれること、資金毎に他の資金と区分して管理されていること、積立限度額が合理的に算定されていること、算定の根拠が公表されていることといった要件を充たす必要があります。
これらは一見似ていますが、いわゆる財務三基準の算定に際して明確に区別する必要がありますので、きちんと相違点を把握する必要があります。
東京本部 小林
平成29年12月14日自民党・公明党が決定した平成30年度税制改正大綱では、事業承継税制について、① 猶予対象の株式制限(総株式数の3分の2)の撤廃, ② 納税猶予割合の引き上げ(80%から100%へ)、③ 雇用確保要件の弾力化(事実上の撤廃 )、④ 最大3人の後継者に対する贈与・相続への対処拡大 など抜本的な拡充が明記されました。
経営者の高齢化が進む中、中小企業の事業承継の円滑化は「待ったなし」の課題である!といわれ続けていましたが、遅々と進んでいないのが現状だと、現場にいて常々感じていました。今後10年間で廃業が急増し、累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があるとの調査結果があるそうです。
事業承継税制とは、後継者である相続人や対象株式の受贈者が、相続や贈与により一定の非上場株式を先代経営者である被相続人や贈与者から取得し、その会社を経営していく場合には、その納付すべき相続税や贈与税のうち、一定の部分の納税が猶予又は免除されるというものです。
この事業承継税制は、平成13年中小企業庁「事業承継税制研究会」発足より、平成16年中小企業庁事業環境部財務課「事業承継関連法制等研究会」発足、平成20年5月「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)成立・平成20年10月1日(民法特例は平成21年3月1日)施行、平成21年4月「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予制度(事業承継税制)創設、平成25年度事業承継税制改正(原則平成27年1月1日から施行)、平成29年度事業承継税制改正(平成29年1月遡及適用開始)と歩んできました。
ここで、平成25年度事業承継税制改正と平成29年度事業承継税制改正をもう少し詳細に見てみます。(出所 東京商工会議所「平成30年度税制改正に関する意見(事業承継)」
【平成25年度事業承継税制改正】
① 事前確認の廃止
経済産業大臣の「事前確認」を受けなくても制度利用が可能に(平成25年4月~)
② 親族外承継の対象化
親族に限定されていた後継者を親族外でも適用可能に
③ 雇用8割維持要件の緩和
「5年間毎年維持」とされていた雇用8割維持要件を「5年間平均」に緩和
④ 役員退任要件の緩和
贈与時に「役員を退任」することとされていたのを「代表者退任」(有休役員として残留可)に緩和
⑤ 納税猶予打ち切りリスクの緩和
利子税率の引き下げ(2.1%→0.9%)(平成26年1月~)
承継期間5年超で、5年間の利子税免除
⑥ 債務控除方式の変更
現経営者の個人債務・葬式費用を株式以外の相続財産から控除
【平成29年度事業承継税制改正】
① 贈与税の納税猶予が取り消された場合の負担軽減措置
生前贈与した場合に納税猶予が取り消された場合の納税額を相続税と同額とする仕組み(相続時精算課税制度)の導入
② 贈与税の納税猶予制度適用におけるインセンティブの創設
非上場株式の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予制度における認定相続承継会社の要件について、中小企業者であること及びその会社の株式等が非上場会社に該当することする要件を撤廃する。
③ 雇用要件のセーフティーネット規定の創設
災害や経営環境の激変時における雇用維持要件の困難化に対応するためのセーフティーネット規定を創設
④ 小規模企業を中止にした雇用要件の緩和
雇用要件8割の基準となる従業員の端数切り捨てにより、従業員5人未満の企業の従業員が1人減った場合でも適用を受けられるように緩和
上記2回の改正は、なかなか進まない事業承継について、要件の「緩和」「撤廃」の流れになっていて、そのことから、政府の相当深刻な危機感が感じられます。特に平成29年度改正は、個人的には「これ以上の緩和はしばらくないのでは」と思う位インパクトのあるものでした。
そこへ今回の平成30年度改正です。本改正は10年間の特例措置として創設されるものであり、現行の29年改正版事業承継税制との両立となるのですが、明らかに今回創設されるものの方が納税者に有利なものとなっています。法制定後、改めて制度内容を熟知し、非上場株式等に係る贈与税・相続税の負担がとても大きいと試算されていた後継者の方々に、是非適用を提案したいと考えます。
最後に、納税猶予又は免除により後継者の方にとっては是非使いたい制度ですが、後継者以外の相続人の方々の遺留分等の権利については、一定の配慮が必要と考えます。
東京本部 根生隆行
投資という言葉が身近になったことに伴い普及した「クラウドファンディング」。積極的に投資されている方も多いと思います。今回はその税務上の取り扱いについて確認したいと思います。
そもそも、クラウドファンディング(CrowdFunding)とは、群衆(Crowd)と資金調達(Funding)という言葉を組み合わせた造語で、様々な理由でお金を必要としている人が、インターネット上で多数の人から資金を募る仕組みを言います。
また、クラウドファンディングは資金調達の側面だけでなく、自社商品やサービスをアピールできるという側面も有しています。
最近のクラウドファンディングの傾向としては、事業資金の全部を調達するのではなく、新たな事業展開の資金調達や市場動向の調査目的での利用がその大半のようです。
クラウドファンディングにより得られた投資結果が銀行からの主要事業資金調達の事業化の根拠としても活用できるため、その高い利用範囲が期待されております。
クラウドファンディングにはいくつか種類があり、大きく分けると「寄付型」、「購入型」、「投資型」に分かれます。では、それぞれの税務についてみていきましょう。
【寄付型クラウドファンディング】
寄付型クラウドファンディングは慈善活動などを目的とするものが多いタイプです。この税務については、プロジェクトの起案者が個人か法人かによって異なります。
(1)起案者の税金
① 個人の場合
A. 個人からの寄付:年間110万円を超えた部分に対しては贈与税がかかります。
B. 法人からの寄付:一時所得となり、所得金額(利益金額)が50万円を超えた部分が課税されます。
② 法人の場合
法人の形態によって取り扱いは異なりますが、原則受贈益となり、法人税の対象となります。
(2)出資者側の税金
① 個人の場合
課税はされず、寄付金控除もありません。
② 法人の場合
一般の寄付金扱いとなり、損金限度額を限度として損金算入ができます。
(3)消費税について
寄付型の場合には、寄付行為が課税取引とならないため、消費税は課されません。
【購入型クラウドファンディング】
購入型クラウドファンディングとは、起案者が集まった資金で開発した商品・サービスを出資者にリターンする仕組みとなりますので、その税務は通常の売買と同様に取り扱われます。
(1)起案者の税金
① 個人の場合
所得税の対象となり、原則としてクラウドファンディングで生じた所得(利益)については、確定申告をする必要があります。
② 法人の場合
法人税の対象となり、実際に商品を提供した時点で、調達した金額から商品の作成にかかった費用を差し引いた後の利益に対して課税されます。
(2)出資者側の税金
① 個人の場合
一般的な買い物と同様のため、確定申告等の必要はありません。
② 法人の場合
事業に必要なものであれば経費として損金算入ができます。
(3)消費税について
通常の売買と同様の取り扱いとなりますので、消費税の計算の対象となります。
【投資型クラウドファンディング】
投資型クラウドファンディングとは、出資者に利益の分配等をリターンとして提供するものです。このタイプの場合、起案者は基本的には法人となることが多いようです。
(1)起案者の税金
① 法人の場合
借入金の会計処理と同様になり、資金調達時点では税金は発生しません。
資金運用により得た利益に対し課税されることになります。
(2)出資者側の税金
① 個人の場合
分配を受けた時に雑所得の対象となり、原則として確定申告をする必要があります。
②法人の場合
調達した資金の運用により発生した利益から分配金の額を差し引いた額に対して法人税が課されます。
最近、クラウドファンディングに対する税金の取り扱いに関する相談が増えております。
当社では、京都発のクラウドファンディングの運営会社との協業を開始しており、最新のクラウドファンディング事情につき、税務はもちろん、その調達方法のご支援を開始しております。クラウドファンディングに関するご相談は、ぜひ、当社までお問合せ下さい。
京都本部 太田
相続財産に借金などのマイナスの財産が多いときには、相続をしないという選択肢があります。すべてを相続しないことを「相続放棄」と言います。亡くなった日から3か月以内に家庭裁判所に申し立てることで認められます。複数の相続人がいても、一人の相続人だけ放棄することができますし、その相続人単独で手続きをすることが可能です。
これに対して、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐことを「限定承認」と言います。借金のみが残るような相続はしないという選択です。こちらも3か月以内に手続きが必要です。ただし、「限定承認」は相続人全員の同意が必要ですので、単独で手続きをすることはできず、相続人全員が共同で手続きを行うことになります。
何もせずに3か月の期限を過ぎると、プラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐ「単純相続」になります。この3か月内に「相続放棄」や「限定承認」の判断できないときは、家庭裁判所に期間の延長の申請をすることができます。
通常、相続税の申告期限は被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内ですが、10か月あると思って相続財産の調査を後回しにしていると、思いもよらない被相続人の債務が判明するケースもあります。3か月という「相続放棄」「限定承認」の期限も頭に入れながら余裕をもって相続手続きをすすめるようにしましょう。
京都本部 中村真紀
近年、中小企業の廃業が増えているそうです。
しかも、廃業する企業のおよそ5割が経常黒字とのことです。
廃業の原因は後継者不足によるもので、2025年には経営者の平均年齢が70歳をこえるとの声も出ているようです。
このまま廃業を見過ごしていくと、2025年までの累計で660万人の雇用が喪失される恐れがあり、これは働く人口の約10%と言われています。
政府はこのような状況に歯止めをかけるために、税制改正大綱をまとめる考えをもっているようで、今後M&Aを行うことにより税負担が軽くなると考えられます。
私の個人的な意見では、廃業を考えている企業の多くは設備や人材のみではなく、長年培われてきたノウハウが多く残されており、今後多角化を目指す企業にとっては、自社で新規事業を始めるよりもM&Aにより買収する方が有利に事業を展開できるのではないかと思います。
また、売却する企業にとっても、廃業という選択よりも何らかの形で事業が受け継がれていくならば、とても喜ばしいことではないかと思います。
今後、税制改正によりM&Aによる税の優遇措置が得られるならば、M&Aはより活発化されると考えられます。
茨城本部 大河原
今回は遺族年金について記載します。
遺族年金と言うと、余り馴染みはないかも知れませんが、もしも自分の夫や妻にもしものことがあったときに支払われる年金になります。
もちろん、社会保険の加入状況に応じて年金の金額や種類が異なります。
今回は、簡単に用語の説明をさせて頂きます。
遺族年金と一言でいっても、色々な種類の年金があります。
具体的には、①遺族厚生年金、②遺族基礎年金、③中高齢寡婦加算です。
1.遺族厚生年金
厚生年金に加入している方(2号被保険者)が亡くなった場合に、遺族に支払われる年金です。特徴としては、一生涯支払いがなされる点があります。納付する年数に応じて支給される金額が変動するのですが、例えば25年未満の納付だと生涯平均月収の1.25倍ほどと言われています。
仮に平均月収が40万円で20年務めた方ならば50万円/年額です。
余談ですが、再婚すると支給停止となりますのでご留意ください(笑)。
2.遺族基礎年金
国民年金及び厚生年金に加入している方(1,2,3号被保険者)が亡くなった場合に支給されます。特徴としては、子供がいる必要があります。年金法上の子供は18歳になるまでという定義があるため、具体的には18歳になると支給停止となります。
金額は779,300円/年で、子供の人数で加算があります。
子供の加算は1人目と2人目までは224,300円/人で3人目以降は74,800円です。
例えば、18歳以下の子供が3人いるとすると、
779,300+224,300+224,300+74,800=1,302,700円/年です。
3.中高齢寡婦加算
厚生年金に加入している方(2号被保険者)が亡くなった場合で、妻に限りもらえます。遺族基礎年金が子供が18歳になり、支給停止になったら支給がスタートし、自分自身の老齢基礎年金がもらえる年齢の65歳になるまで支給されます。
40歳~64歳までもらえます。
金額は584,500円/年です。
このように、もしも自分の配偶者等が亡くなった時には遺族年金が支給されます。
ただし、金額については思いのほか少ないと思われるかも知れません。
仮に夫が居なくなったあとに同様の生活をするために必要な資金を示す方式でホフマン方式があります。ホフマン方式によると、同レベルの生活を継続するには、夫の月収×70%が必要となるそうです。
身近な人に何かあった時に備えておくことも必要ではないでしょうか。
今回の記載内容が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
茨城本部 楢原 英治
相続税において最もポピュラーな節税対策の一つとして「賃貸アパート」の建設が挙げられるのではないでしょうか。
アパート建設の際の借入金が債務として相続財産から控除されることで相続財産を圧縮する効果があり、更にその土地については約2割に評価減、建物については3割の評価減・・・と、何だかいいこと尽くめの節税対策のように思えてしまいますが、ここのところこの「貸家建付地」絡みの節税策について何やら雲行きが怪しくなってきたように感じられます。
そもそも自分の土地の上に建てた建物に賃料を貰って他人を住まわす行為については、専門的な用語で言うところの「借家権の支配」が及ぶこととなり、その人を勝手に退去させることはできず、退去してもらうには立退料という費用が発生することとなり、そのように自分の土地建物について自由な使用が制限されることに対して財産評価上、評価減という斟酌がなされることとなっております。
しかしながら賃貸集合住宅においては、常時満室という状態が続くということは地域によっては考えづらく、築年数が経つほど空室割合が増すほうが一般的なのです。
ここが問題で、相続税における財産評価は相続発生時における時価となっており、つまり亡くなった日にその部屋に入居者がいない場合、その部屋については「借地権の支配」が及んでないことから、その土地及び建物についての評価減を受けられなくなってしまうのです。
ただし、さすがにたまたま亡くなる直前に入居者が退去してしまい、すぐに新たな入居者が入るケースについては、入居者がいるとみなして評価減を受けることができるのですが、その要件として常に賃貸用として募集もしている等の場合、課税時期前後概ね1か月程度の空室については、入居者がいるものとして評価減が認められるという国税庁の情報が公開されております。
ここでいつも揉めるのが、「課税時期の前後の例えば1か月程度の空室期間」についての解釈なのです。
平成20年6月の高松国税不服審判所裁決事例では、空室期間が生じた諸事情も考慮すべきとし、最長1年11か月の空室期間も一時的な空室として認められこの裁決が一時的な空室の期間についてのジャッジにおいて重要な判断材料となっておりましたが、ここのところの裁決事例ではその一時的な空室に期間が短くなっており、とうとう平成29年5月11日の大阪高裁において5か月の空室を長期間と判断される判決が出てしまいました。
このような流れがスタンダードとなってしまうと、課税庁側は金科玉条の如く課税時期前後1か月以上は空室と判断してくることとなるでしょうし、納税者側としてもこの空室期間についての諸事情を主張しづらくなってしまうのではないでしょうか。
例えば、10室のうち8室が空室というアパートの場合、20%の評価減がたった4%の評価減となってしまうのです。
昨今の賃貸アパートの建設ブームを考えると、今後も築年数が経てば経つほど空室が増える可能性は高くなり、せっかく節税対策として建てたアパートも建設当初に想定していた評価減を十分に受けられなくなるという事態が今後増々増えてくるのではないでしょうか。
埼玉本部 菅 琢嗣