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優和ビジネスブログ

NISAも新たなステージへ

平成26年に始まった少額投資非課税制度、いわゆるNISAも今年で5年目を迎えました。

このNISAにとって5年目というのはひとつの節目の年であり、1年目の平成26年に投資した株式及び投資信託等でいまだ今年の12月末までに売却していないものについて、平成31年非課税枠へ移行(このことをロールオーバーといいます)するか、通常の課税口座へ移行するかの選択をしなくてはならないのです。

 ① 順調に利益を増やしている場合

(1)ロールオーバーする・・・この場合、平成31年分の非課税枠がロールオーバーした分少なくなります。

   ただし、評価額が120万円以上であってもその評価額にてロールオーバーできます。 

(2)課税口座を選択する・・・この場合、平成30年12月末の評価額から課税口座はスタートするため、

   それまでの評価益には課税されません。

②残念ながら評価損となっている場合

(1) ロールオーバーする・・・この場合、①(1)と同様です。

(2) 課税口座を選択する・・・この場合、①(2)と同様に平成30年12月末の評価額から課税口座は

    スタートするため、それまでの評価損は、この時点で確定され損益通算されることも有りません。

    いわゆる損切りとなります。

このように4つのカテゴリーに分かれることとなりますが、現在評価益が出ている場合は課税口座に移してもこれまでの評価益については非課税が確定されますし、更に新たな非課税枠が与えられます。また、120万円以上の評価益のままロールオーバーすればさらに大きな利益分の非課税の恩恵を受けることもできます。

現在評価損が出ている場合は課税口座に移してこれまでの評価損について「損切り」するか、ロールオーバーしてこれからの5年間でリベンジするかの選択をすることとなります。

すべてのケースにおいて一長一短はありますし、個人的には損切りは勿体ない気もしますが、ある意味一つの投資戦略かもせれませんので今年の年末は、悩ましい選択を迫られることとなりますが、まずはそれぞれの長所短所はしっかり勉強して理解しておくべきでしょう。

(番外編)

NISAには株式が向いているのか?投資信託が向いているのか?

完全な私見ですが、自身で実際に運用してみて感じることは、NISAに10年という期限がないのであれば投資信託もドルコスト法を使ってかなりのレバレッジをかけることも可能かも知れませんが、10年という短期決戦を考えると株式のほうが向いているように思いました。あくまでも個人的な意見です・・・。

埼玉本部 菅 琢嗣


配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しに伴う年末調整の提出書類

平成29年の税制改正により、配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しが行われ、平成30年分以降の配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しが行われました。

 

これに伴い、平成30年の年末調整より、会社が従業員に提出を求める書類が従来の2種類から下記の3種類になります。

 

1.給与所得者の扶養控除等申告書

2.給与所得者の配偶者控除等申告書

3.給与所得者の保険料控除申告書

 

改正に伴い各申告書の追加項目は下記のようになります。

 

まず、配偶者控除は、改正により、給与所得者の合計所得金額に上限額(1,000万円)が設けられ、上限以下の所得金額については3段階に区分し、所得控除額を逓減させる仕組みとなりました。これに伴い、「給与所得者の配偶者控除等申告書」 では、給与所得者及び配偶者の合計所得金額の見積額の計算表や判定区分、控除額の計算欄等が追加されました。

このうち、見積額の計算については、直近の源泉徴収票や給与明細書を参考に記入するようになります。また、企業測は、従業員が申告書に記載した配偶者の合計所得金額の見積額について、その金額が適正額かどうか後日、配偶者の給与明細などの提出などをを求めなくてもいいようです。

 

 「給与所得者の保険料控除申告書」については、小規模企業共済等掛金控除欄において、従来、個人型及び企業型年金加入者掛金とされていましたが、平成30年からは、確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金と確定拠出年金に規定する個人型年金加入者掛金の欄に区分されています。

 

配偶者控除及び配偶者控除の見直し及び年末調整の申告書等の様式及び記載例については、

下記のURLを参照してください。

 

https://www.nta.go.jp/users/gensen/haigusya/index.htm

 

また、配偶者控除及び配偶者控除の見直しに関するFAQが国税庁から出ているので下記のURLを参考にしてください。

 

https://www.nta.go.jp/users/gensen/haigusya/pdf/koujo_faq.pdf

 

 

東京本部 佐藤


役員退職給与の損金算入限度額について

 

 実務上、役員退職給与の損金算入限度額の算定にあたっては功績倍率法(役員の職責に応じた倍率)により算定することは一般的に定着しているところですが、平成29年税制改正で法人税基本通達9-2-27の2が創設されるまでは、功績倍率法という文言、定義については、過去の判決での明示に留まり、法令や通達で明文化されていませんでした。

しかし、この通達が創設されたことにより初めて「功績倍率法」という文言とその定義が示されました。

 同通達によると、功績倍率法とは「役員の退職の直前に支給した給与の額を基礎として、役員の法人の業務に従事した期間及び役員の職責に応じた倍率を乗ずる方法により支給する金額が算定される方法をいう。」と定めています。

 ここでいう功績倍率には、過去の判決で示されている同業類似法人の功績倍率のみでなく、自社で設定した功績倍率等も含まれるとのことであり、これらを基に算定した役員退職給与についても、その金額が過大つまり不相当に高額でなければ、原則損金算入が認められるとされています。あくまで、この通達で示されている功績倍率法による役員退職給与は、業績連動型の役員退職給与に該当しない類型のひとつを示したものであり、役員退職給与の支給額が不相当に高額か否かは、これまでと同様に同業類似法人の支給状況や功績倍率などと比較して判断されることとなります。

 過去の判例によれば、役員退職給与における不相当に高額な部分の金額とは、以下の方法により適正額を算定した上で判断されています。

 

(1)平均功績倍率法

 

役員退職給与を支給した当該法人と同種の事業を営み、かつ、その事業規模が類似する法人の役員退職給与の支給事例における功績倍率の平均値に、当該退職役員の最終月額報酬及び勤続年数を乗じて、当該役員退職給与の適正額を算定する方法。

 

(2)1年当たり平均額法

 

同業類似法人の役員退職給与の支給事例における役員退職給与の額を、その退職役員の勤続年数で除して得た額の平均額に、当該退職役員の勤続年数を乗じて、当該役員退職給与の適正額を算定する方法。

 

(3)最高功績倍率法

 

同業類似法人の役員退職給与の支給事例における功績倍率の最高値に、当該退職役員の最終月額報酬及び勤続年数を乗じて、当該役員退職給与の適正額を算定する方法。

 

 東京高裁平成25年7月18日判決によれば、(1)の平均功績倍率は、同業類似法人の功績倍率の平均値を算定することにより、同業類似法人間に通常存在する諸要素やその個々の特殊性が算定の要素から外されることになり、より平準化された数値が得られることから法令の趣旨に最も合致する方法であると示され、また、(3)の最高功績倍率法については、同業類似法人の抽出が僅少であり、その法人と最高功績倍率が極めて類似している場合に限られる方法とされています。

 (2)の1年当たり平均額法については、東京高裁平成25年9月5日判決において、その役員の退職直前の役員報酬が大幅に引き下げられた場合など、平均功績倍率法を適用することにより不合理が生じる場合には合理的な方法とされています。

 上記の様に、役員退職給与の適正額の算定にあたっては、その法人の実態や諸要素、またその役員の特殊性などにより一概に判断することが難しいと考えられます。もし、役員退職給与の支給を予定されている場合は税理士法人優和までご相談ください。

 

東京本部 井上 賢亮


収益認識に関する会計基準における法人税法の対応について(変動対価を中心に)

2018年3月30日に公表されました「収益認識に関する会計基準」。業界ではこの新たな取り組みに対する対応の準備が進みつつあります。

 

収益認識に関する会計基準(以下、収益認識会計基準といいます。)とは、これまで企業会計原則において規定されていた「売上高は実現主義」という漠然とした内容をより具体的にするために、収益に関する包括的な基準設定のために開発された新しい会計基準です。

 

この会計基準は企業会計原則より優先して適用される会計基準となりますが、中小企業においては従前の企業会計原則等によることができるとされているため、中小企業の会計に関する指針や中小企業の会計に関する基本要領によることもできます。

 

また、国税庁でも早々にこの収益認識会計基準への対応について、「法人税法22条の2」及び「法人税法施行令18条の2」並びに個別通達の改正を行いました。基本的な姿勢はこの収益認識会計基準の考え方を取り込んでいくことになります。

 

この収益認識会計基準の基本原則は、「約束した財又はサービスの顧客への移転を、当該財又はサービスと交換に権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益を認識する」であり、収益認識について次の5ステップをクリアする必要があります。

 

ステップ1

 顧客との契約を識別する。

ステップ2

 契約における履行義務(収益認識の単位)を識別する。

ステップ3

 取引価格を算定する。

ステップ4

 契約における履行義務に取引価格を配分する。

ステップ5

 履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する。

 

ステップ3では、値引き、リベート等、変動性のある金額が含まれる場合には、その変動部分を見積り、その部分を増減して取引価格を算定することになります。この対価を「変動対価」といいます。

 

変動対価として見積られた額については、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に含めることとなります。

変動対価は一定の要件を満たすものに限り、法人税法上もその対価の額を収益(益金)として認識することとなります。これは「合理的で実現可能な時価による収益(益金)計上が可能になった」といえる対応になります。

 

しかし、一部の変動対価は、その変動見込み(減収見込み)を法人税法は控除できないものはあります。

 

それは「返品権付き販売」です。

 

返品権付き販売とは、主にこれまでの返品調整引当金の対象となっていたものをいいます。

この販売を行う場合、次のとおり会計と税務でズレが生じます。

こちらをクリック

PDF

 

返品調整引当金は今回の変動対価の登場で、損金経理要件を満たさないこととなるため、法人税法上は廃止されることとなります。出版業等、特定の業種による無条件買戻し契約による販売を行う会社にとっては大きなインパクトとなります。そのため、国税庁も突然の廃止による影響を懸念し、経過措置を設けて段階的に廃止していくことを決めました。

 

 税理士法人優和は、最新の会計基準・税制動向へのいち早い対応が可能な組織体制を構築しております。収益認識に関する会計基準への対応はぜひ、税理士法人優和までご相談下さい。

 

京都本部 太田

 

 


災害による損失が生じた場合 (広島県の豪雨による被害を受けた方の税務上措置)

7月の豪雨により大きな被害が各地で発生しました。

今回は、税務関係に関する申告等の期限延長や帳簿書類等が流出した場合の取り扱いについて取り上げてさせていただきます。

 

1.平成30年分の所得税等の申告・納付について

平成31年3月15日が申告期限ですが、申告・納付をその期限までにできない場合は、

個別に申告等の期限延長が認められています。

延長を行う際は、所轄の税務署へ災害等のやんだ日から2ケ月以内の範囲で期限が延長されることとなっております。

 

2.給与取得者等が災害により住宅・家財について損害を受けた場合

家屋又は家財が、その時価の2分の1以上の損害を受け、平成30年分の合計所得金額見積が1,000万円以下の方は、その見積額に応じて源泉所得税等の徴収猶予や還付を受けられます。受ける際は、年末調整の対象外となりますので、確定申告により所得税を精算することになります。

 

3.帳簿書類が流出した場合

前年の所得計算の内容を参考にする等で申告することとなります。

課税仕入れに係る帳簿書類等がすべて流出した場合、災害等により帳簿及び請求書等を保存できなかった場合に該当しますので、消費税の仕入れ税額控除が認められています。

 

4.所得税等の予定納税

災害により大幅な所得の減少が見込まれる方は、災害減免法3条又は所得税法111条の手続きにより減額申請を行えば、軽減又は免除が受けられます。

 

先日も台風が直撃しており、お客様の工場のシャッターがつぶれてしまうような被害もありました。自然災害には油断できません。

申告等も大事ですが、まずは自分の身を守るため、災害対策を行わなければいけません。

今一度、防災グッズの備え等を見直さなければなりませんね。

 

京都本部 中村


租税特別措置法上の適用額制限の見直しと当初申告要件

  法人税額の20%を上限として控除できる租税特別措置法上の控除要件を満たしたために50万円控除できた。しかし、税務調査などで修正申告が必要となり、法人税額が100万円増加した。

 この場合、控除額の上限枠がさらに20万円以上あるとするならば、控除額を70万円にできるのだろうか?

 

結論から言うと昔はできなかったが、現在はできます。

 つまり、従来は50万円の控除で申告した申告書は修正申告で所得金額が増加しようが50万円以上の修正はできなかったのです。これが適用額制限といいます。

 この適用額制限の見直しがあり、現在では当初の申告では50万円だったものでも修正により法人税額が100万円増加した場合には70万円に訂正することができるようになったのです。

 

これに対し、本来なら税額控除を受けられたはずなのに、当初申告で適用していなければ更生の請求をしても認められないのが当初申告要件です。

 

ここで注意しなければならないのが適用額制限の見直しにより修正申告で変更ができるものでも、当初申告要件が必要なのにそれを満たしていなければ無意味であることです。

 

具体的に説明すると、所得拡大促進税制を適用して申告していれば税額控除が受けられます。しかし今回の申告では法人税額は少なそうだ。20%の法人税額の控除を受けられても僅少だし、この制度の算定が煩雑だ。だから今回は申告するのをやめておこうと考え適用しなかった。

しかし後日売上の計上漏れが判明した。金額は500万円で、この制度を適用していれば最大100万円の税額控除が受けられたはずであったが、当初申告の要件を満たしていないため、修正申告でこの制度の適用することはできず、最大100万円の税額控除は諦めなければならないことになります。

これに対し、僅少であっても当初申告をしていれば、後から修正申告に際し、法人税額が500万円増加したことで、当初の控除額の金額が仮に5万円であったとすると最大105万円まで控除額を訂正できることになります。

 

以上をまとめると、適用額制限の見直しは当初申告で計上した控除額を修正申告で訂正することができるのに対し、当初申告要件はこれを満たしていなければ、修正申告の際に改めて適用することができないという違いがあります。

 

茨城本部

大河原


非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除 (事業承継税制)のあらまし

国税庁のホームページに、「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(事業承継税制)のあらまし」が掲載されました。
 事業承継税制は、後継者である受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。
 平成30年度税制改正では、この事業承継税制について、従来の措置に加え、10年間の措置として、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限の撤廃や、納税猶予割合の引上げ等がされた特例措置が創設されました。
 従来の措置と比較した要点としては、
①事前の計画策定等
従来は不要であったが、特例措置では5年以内の特例承継計画の提出が必要
(平成30年4月1日~平成35年3月31日)
②適用期限
10年以内の贈与・相続等
(平成30年1月1日~平成39年12月31日)
③納税猶予割合
100%
④雇用の80%維持要件
承継後5年間は平均8割の雇用維持が必要。
但し、特例措置として弾力化(下回った理由を報告することで容認される余地あり)。
特例承継計画を平成35年3月31日までに都道府県知事宛に提出し確認してもらいましょう。
仮に、この事業承継税制を適用しない場合であったとしても、可能性がある場合には提出しておくべきです。
また、贈与・相続時に提出するのではなく、事前に提出する点を注意すべきです。
計画を提出・確認した後に、実際の贈与・相続が発生した際に、円滑化法の認定を受ける必要があります。
また、一旦提出し認定を受ければ、以後の手続きが何もない訳ではありません。
継続届出書の提出があります。
具体的には、雇用の維持や贈与・相続により取得した株式を引き続き保有していることを届け出る必要があるのです。
仮に、当該株式を外部に売却してしまった場合や、後継者が代表権を有しなくなった場合等には、猶予されていた税額が利子税を含めて納付することとなります。
本税制を適用する際には、継続届出書を毎年提出すること、要件を満たさないと課税されてしまうことを注意するべきです(認定後5年間は毎年、5年目以降は3年ごとの提出)。
贈与により株式を受け取った場合に、先代がなくなると、相続税の納税猶予へ移行することになります。この際の計画認定は、既に贈与時に認定を受けている為、不要となります。
会計事務所としての仕事をしている中で、清算・廃業の件数が増加傾向にあることを感じています。
中小企業庁が公開している中小企業白書によると、小規模な企業数の推移として、1999年が423万社あり2014年には325万社まで減少しているそうです。
2009年~2014年の開業が66万社、廃業が113万社となっています。
これ以上の企業数減少に歯止めを掛けるべく、政府としても前向きに取り組んでいる姿勢を感じます。
弊所としても、顧問先の皆様に喜んでいただけるよう積極的に取り組んで参りますので、不明点など御座いましたら各本部担当者までご連絡ください。
最後までお読みいただき感謝申し上げます。
本原稿が皆様のお役に少しでも立ちましたなら幸いです。
茨城本部 楢原 英治


小規模宅地等の特例・その2

前回は、小規模宅地等の特例の平成30年税制改正における改正点についてでしたが、今回は実際私自身が実務であったケースについて検討してみました。資産税の勉強及び実務を始めたばかりの方にとっては意外と参考になるのではないでしょうか。
①「特定居住用宅地等」の適用を受けられる親族とは?
 ・持家を持たない親族(いわゆる家なき子)がいた場合、この親族について「家なき子だから適用を受けられる!」と思ってしまったが被相続人の配偶者がいたため、この親族については例外なく適用を受けられなかった。
 ・いくら家なき子の要件を満たしていても被相続人と他の親族が同居していたら適用は受けられないのか??と思いきや被相続人と同居していた親族が法定相続人でない親族の場合(例えば被相続人の兄弟姉妹など)は被相続人にすでに配偶者がいない場合、家なき子である法定相続人である親族は適用を受けられる。
②養子縁組の場合
・これは実際にあったケースですが祖父の後妻と養子縁組し、養子となった本人が後妻の相続が発生したときに家なき子であったため「特定居住用宅地等」の特例を受けたのですが、その後実親の相続が発生しました。
 この方は一度「特定居住用宅地等」の特例を受けたが、依然として持家を所有してないことから約2年という短いスパンで人生2度目の「特定居住用宅地等」の特例を本当に受けられてしまうのか???
 条文どおり解釈するならば何も問題なく、そのまま小規模宅地等の特例を受けるという選択を申告しました。その後期間を置くことなく税務署のほうからお尋ねがあり、現在住まわれている賃貸物件の契約書を見せてほしいと言われただけでその他については申告後3年が過ぎた現在に至って何もありません。
③土地の無償返還に関する届出が出ている場合
・これは私自身結構ドキッとしたのですが、そもそも無償返還の届出とは法人に対する権利金の認定課税を防ぐために出すためということが真っ先に頭に浮かびますが、それなりの地代を払っていればその法人が建物を所有していた個人の底地について貸宅地の評価減(自用地評価の80%)ができ、さらに小規模宅地等の特例も受けることができるのです。そこで問題となるのが「それなりの」地代なのです。
「それなり」とは年間の地代収入が固定資産税相当額の2~3倍などと、物の本には書かれていたりすることがあります。
そこではじめてその重大な事実に気が付き慌てて計算してみたところ問題なく2~3倍という目安はクリアしておりホッと胸を撫で下ろすこととなりましたが、それはあくまでも「結果オーライ」であって本来はその法人と関わるようになった最初に地代設定の根拠を確認すべきであったのでしょう。
一方で判例、裁決事例等によると必ずしも2~3倍ないといけないというものでもなく大事なのは世間相場であり、ある地域では1~1.5倍でも認められているケースもあります。
小規模宅地等の特例は多種多様にわたり、とても奥が深いので特に注意して取り組む必要がありそうです。
埼玉本部 菅 琢嗣


小規模宅地等の特例・その1

 周知のとおり平成30年度税制改正では、事業承継税制と並び小規模宅地等の特例についても大きな改正が行われました。
 小規模宅地等の特例の本来の趣旨は、家族が生きていくにあたり最も重要な住む場所とお金を稼ぐ場所については税制面において最低限保証していこうというものであり、その解釈が少し拡大されたのが、今は諸事情で持家を持っていないが相続人から引き継ぐ将来の持家についても同様に保証していこうというのが俗に言う「家なき子」の特例というものです。
 相続開始の時点において持家を持っていなければいいのであれば、例えばもともと持家を持っていたにもかかわらずその持家を形式的に子に贈与(飛ばし贈与)し、そのまま子の名義の家に住み続けるといった本来の制度の趣旨から逸脱した行為が横行していたことに対して課税庁側も苦々しく憤りを感じており、今回の改正でこのような「家なき子外しスキーム」を封じる改正が行われました。
 簡単に言うと、①相続が始まる前から3年さかのぼって身内やその身内らが経営する会社が所有している家に住んでいたことがある場合や②相続が開始したときに住んでいる家を以前は所有していた場合は小規模宅地等の特例を受けられなくなりました。
 ①については、実態としては自分が持っていなくても持家同然という考え、②についてはまさに家なき子外しスキーム封じということです。
 この改正は、平成30年4月1日以降開始される相続について適用されることとなりますが、経過措置として相続開始が平成32年3月31日までのものについては、平成30年3月31日までの旧要件を適用できることとなりました。
 今後それを考慮した資産税関連の対応が必須となりそうです。
埼玉本部 菅 琢嗣


個人株主が非上場株式をに譲渡した場合の課税関係

同族会社の個人株主が所有株式を個人株主に売却する場合と、発行法人に売却する場合とでは下記の様に税務上の取り扱いが異なります。
・個人株主に売却する場合
 個人株主に売却する場合は、下記の金額が譲渡所得となり所得税及び復興特別税
15.315% 住民税5%が課税されます。
 株式等の譲渡に係る総収入金額-(株式等の取得費+譲渡費用+借入金利子等)
・発行会社(同族会社)に譲渡した場合
①配当等とみなされる部分の金額
発行会社への株式の譲渡対価として取得した金銭等のうち、発行会社の税務処理で利益積立金の減少とみなされるべき金額は、原則としてその株式を譲渡した株主において配当とみなされ、配当所得として課税されます。これがみなし配当といわれるものです。
下記URLをクリックして図解を見ながらご理解ください。
  URL: http://ur0.link/K1bN
配当所得は総合課税の対象であり、配当控除の対象となります。またこの所得に対しては、20.42%の源泉所得税が徴収されます。
②譲渡所得の計算
発行会社への株の譲渡対価として取得した金銭等の額から、みなし配当の金額及び株式の取得価額を除いた金額が譲渡所得等の金額となります。この場合、他の非上場株式の譲渡損があるときは損益の通算ができますが、他の所得や上場株式との損益の通算はできません。
・相続等により取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合
  相続又は遺贈により財産を取得した個人で、納付すべき相続税額がある場合にはその相続等した財産の中に非上場株式がある場合には、一定の手続きをすることにより上記のみなし配当課税は行わず、その譲渡対価の全額が株式の譲渡所得の収入とみなされます。
上記の様に個人株主が非上場株式を発行会社に譲渡した場合には複雑な計算が必要になる場合があります。また、特例等を受けるためには期日までに必要な手続きがありますので、下記URLをご参照ください。 
  URL:http://ur0.link/K17J
詳しくは、税理士法人優和までお気軽にお問合せください。
東京本部 佐藤


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