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優和ビジネスブログ

消費税率引上げに伴う印紙税の取扱い

 令和元年10月1日より消費税率が8%から10%へ引上げられました。今のところ世間一般に大きな混乱はないように感じます。そう感じるのは施行されてからまだ日が浅いからでしょうか?これからポロポロと色々な問題が噴出しなければ良いなと思います。

 さて、印紙税は主に商取引で使う文書に対して課税されるものです。課税対象となる文書で身近なものは契約書、領収書、約束手形、会社の定款などがあり、様々な課税対象となる文書が印紙税法において第1号文書から第20号文書まで定められています。

今回は実務でよく目にする第2号文書(請負に関する契約書)をピックアップしたいと思います。第2号文書の取扱いについては、消費税が区分記載されている場合。または、税込価格及び税抜金額が記載されていることによりその消費税額が明らかである場合には、その消費税の金額を印紙税の対象の金額に含まないこととなっております。

第2号文書の基本的な取扱いは上記となりますが、今回の消費税率の引上げにより契約金額の消費税を8%から10%へ変更するケースがあります。 

例えば、令和元年6月1日に税抜1,000,000円消費税80,000円と区分記載されている建設工事の請負に関する契約書を作成し、その引渡しが令和元年9月末日であったにもかかわらず工事の遅れにより消費税率が変更となる10月1日以降の引渡しとなったため税抜1,000,000円消費税100,000円に変更するための変更契約書を作成する場合が該当します。

印紙税法では、契約書の請負の内容、契約金額、取扱数量、単価などの「重要な事項」を変更したときに作成する変更契約書について課税対象としています。では、上記の場合の様な税抜の契約金額に変更はないものの消費税率の引上げにより消費税額のみを変更するための変更契約書に印紙税はかかってしまうのでしょうか?答えは印紙税がかかってしまいます。

 実は印紙税法基本通達の別表第2なるものに、契約書上の「重要な事項」の例示が示されており、消費税の変更については、この例示の中の「契約金額」の密接関連事項として課税の対象となっているのです。

 具体的に見てみると、消費税の金額についてのみ変更する変更契約書の場合、変更前の消費税の金額と変更後の消費税の金額との差額が課税の対象となり200円の印紙税がかかります。ただし、変更前の消費税の金額と変更後の消費税の金額の差額が1万円未満の場合は非課税文書となるので印紙税はかからないこととなっております。これは、零細な取引に伴って作成された契約書については印紙税の負担を求めないとの観点から設定されているそうです。

 今回第2号文書の取扱いを見ましたが、その他の文書についてもまた違う取扱いがありますので、取扱いに迷われたらお近くの税理士法人優和までご相談ください。

東京本部 井上賢亮


消費税の内外判定

最近は外国の会社と取引されるお客様も増えてきて、消費税の処理について頭を悩ませる機会が多くなりました。消費税の経理処理においては、今話題の「税率」の他に国内取引か国外取引か(いわゆる「内外判定」)というものも関わってきます。今回はその「内外判定」での事例をご紹介しようと思います。

A社は日本国内に本社があり、国内の顧客向けに情報解析サービスを提供している会社です。今までは、その情報解析を国内の他の会社にお願いしたのですが、今後国外の会社に変更することを予定しています。このA社が国内において提供しているサービスに今後消費税が課税されるかどうかというのが今回のテーマです。

今までは、国内の事業者から提供されたデータを国内の顧客に提供していたわけですから、当然、売上・仕入とも課税取引として処理していました。ただ、今後は外国からの仕入になり、それに対応する売上について消費税を課していいのかというのがA社からの質問です。

海外から「モノ」を仕入れている会社ですと、輸入する時に輸入消費税が発生し、商品代金の他に消費税を別途納めています。そのため、売上・仕入ともに消費税が課税されます。では、海外から「サービス」を仕入れた場合はどうなるのでしょうか。

消費税の基本的な考え方として、消費税が課税される取引は、「①国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、資産の貸付け及びサービスの提供、②外国からの商品を輸入する場合」になります。そこで問題となってくるのが、そのサービスの提供が国外で行われたのか国内で行われたかの判定です。(内外判定)

サービスの提供の内外判定は、そのサービスの提供が行われた場所で判定するのが基本ですが、国内及び国内以外の地域にわたって行われるサービスの提供その他のサービスの提供が行われた場所が明らかでないものについては、サービスの提供を行う者のサービスの提供にかかる事務所等の所在地を基準として判定することとされています。

この「事業所等」の定義ですが、通達では「当該譲渡または貸付を行う者に係る事務所等で、当該譲渡または貸付に係る契約の締結、資産の引き渡し、代金の回収等の事業活動を行う施設」と定義し、裁判例では「役務の提供に直接関連する事業活動を行う施設をいうものと解され、その所在地をもって、役務の提供場所に代わる課税対象となるか否かの管轄の基準としている趣旨からすれば、当該役務の提供の管理・支配を行うことを前提とした事務所等がこれに当たると解されるというべきである。」とされています。

今回のA社の場合ですと、情報解析サービスの全体は、「国内及び国内以外の地域にわたって行われるサービスの提供その他のサービスの提供が行われた場所が明らかでないもの」に該当すると認められますが、A社の情報解析サービスに係る管理・支配を行うことを前提とした事務所は国内にあると考えられるため、今回の情報解析サービスは消費税の課税の対象になるということになります。

このように消費税は少し複雑な面もありますので、経理処理に迷ったら是非税理士法人優和までご相談ください。

池袋本部 木村


消費税増税

本日2019年10月1日から消費税が10%に変更となり、軽減税率制度が実施されました。

そこでもう一度今回の消費税増税、軽減税率のおさらいを簡単にさせていただきたいと思います。

本日より標準税率は10%が適用となります。

ただし、酒類、外食等を除く飲食料品や定期購読契約に基づく新聞等については8%が適用となります。

本年9月30日までは消費税一律8%(一部経過措置5%のリース取引有)でしたが、本日以降は消費税10%、軽減税率8%、経過措置8%(5%)といった複数の税率となるため、きちんと区分経理を行っていく必要があります。

●仕入税額控除要件

【令和5年9月30日まで】

区分経理に必要な事項を記載した帳簿及び区分記載請求書の保存が必要となります。(3万円未満の取引については帳簿のみで区分記載請求書が発行されなくても仕入税額控除の要件を満たします。)

10月1日以降の請求書等への記載事項に追加があります。

従前

・帳簿・・・支払先の名称、取引年月日、取引内容、金額

・請求書・・・請求書発行先の名称、取引年月日、取引内容、金額、請求書受領者の名称

今後

・帳簿・・・上記従前の4要件に軽減税率の対象品目である旨を記載することが加わりました。

・請求書・・・上記従前の5要件に軽減税率の対象品目である旨と税率ごとの税込合計金額を記載することが加わりました。《交付された請求書に今回付け加わった軽減税率対象品目である旨と税率別の税込合計金額の記載がなかった場合はこの項目のみ受け取った側での追記が可能です。》

【令和5年10月1日以降】

区分記載請求書の保存に代えて、適格請求書等の保存と上記のとおり記載した帳簿が仕入税額控除の要件となります。

適格請求書を発行できるのは、登録された事業者に限られます。

登録をするには令和3年10月1日から令和5年3月31日までに登録申請書を税務署に提出します。税務署から登録番号が通知され、その番号を適格請求書に記載する必要があります。また、登録をすることにより基準期間が1000万円以下になったとしても登録取消届出書を提出しない限り課税事業者であり続けます。また、免税事業者に関しては適格請求書を発行することができないため免税事業者からの仕入等に関しては仕入税額控除が受けられないということなります。(段階的な経過措置がありますが)

いずれにせよ、消費税の増税が開始されたため経理をご担当されている方々については現状では区分記載請求書等をきちんと確認し、記載事項に漏れがないかを確認し、消費税の税区分を間違えずに記載(入力)をする必要があります。

入力区分のミスで会社の損益にも影響を及ぼしますので、税区分には注意を払って日々の経理業務を行っていきましょう。

池袋本部 樋口


民法改正 特別寄与料の請求権

2019年7月1日より民法改正の一つで特別寄与料の請求権の条文が施行されます。

その中で被相続人への『療養看護その他の労務の提供』をした場合には相続人でなくても寄与分が認められるようになりました。

まず、寄与とは、特定の相続人に認められるもので、被相続人への無償の療養介護や家業の手伝いなどを行った場合に、相続分に加算して財産を受け取ることができるものでした。

しかし、これはあくまで相続人に該当する人物に限定され、実際に介護を行っていたりする被相続人の子の配偶者などには寄与分が認められていなかったという背景があります。

今回新たに施行された特別寄与者は被相続人の相続人でない親族と定められています。親族とは、配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族であり、子の配偶者はこの中に含まれます。これにより子の配偶者も相続財産を遺贈される権利が認められるようになりました。

相続税の計算においては、特別寄与者に特別寄与料を支払った相続人は、相続税を計算する上で相続財産の価格から支払った特別寄与料を控除することができます。

対して、特別寄与料の額が確定したことにより新たに相続税の納税義務が生じた人は、その事由発生を知った日から10ヶ月以内に相続税の申告が必要となります。

また、特別寄与料を受け取る人は相続税額の2割加算の規定に該当するため本来の相続税に2割加えた金額を納める必要がありますので注意が必要です。

民法改正に伴い、相続税法も変化しておりますので相続の際には是非一度税理士法人優和までご連絡ください。

京都本部 近藤


「相続の空き家特例」

「少子高齢化」という言葉が使われるようになってから久しいですが

これに伴って、様々な歪みが予想されています。

労働力の減少、税収の減少、介護人員の不足、年金問題など様々ですが

その中の一つに「空き家問題」があります。

全国の空き家は2019年4月の時点で約846万戸あるそうです。

今後、日本の人口減少に伴い2033年には2,000万戸を超えると言われています。

つまり全住宅の3戸に1戸が空き家になってしまうということです。

そこで創設された対策の一つが、いわゆる「相続の空き家特例」です。

以前より、自分が居住用としていた不動産を売却した場合には

売却益から3,000万円を控除して税金計算ができるという制度があります。

この制度を充実させて、要件を拡大したものがこの特例です。

つまり、亡くなった方の居住用の不動産を相続で取得した場合、それを売却した場合でも、

売却益から3000万円を控除できるようにしました。

この制度により、多額の税金の心配をしなくても、相続した居住用不動産を売却することが可能となりました。

この特例は、相続の日から3年目の年末までに売却することが要件の一つになっていますので

売却に踏ん切りがつかなかったご遺族も、背中を押される形になっているようです。

みなさんの周りにも、最近、更地になって売りに出されている土地が多くありませんか?

この「相続の空き家特例」には、

居住用家屋に関しては、昭和56年5月31日以前に建築された建物であり、耐震基準や住宅性能評価が取得できる状態であるものとの要件が付されています。

土地に関しては、 上記の居住用家屋の敷地であること又は上記家屋を取壊し後の土地であることとなっています。

つまり、家が建っている状態であれば、耐震補強などしっかりと整備されたものでなければいけないため、

家を取り壊して更地にした状態で売りに出しているものと思われます。

不動産屋も積極的にこの特例の活用を推進しているようです。

生まれ育ったご実家を取り壊すことは、簡単には決断しづらいことではあります。

が、利用できる制度は利用できる間にうまく活用するのも一案でしょう。

特例の適用には、期限や様々な要件があります。検討されたい方は、税理士法人優和までご相談ください。

京都本部 吉川


軽減税率②

前回に引き続き、令和元年10月1日に施行予定である消費税の軽減税率制度について、第2弾 実際のケーススタディを想定して一問一答形式で簡単に解説していきます。

第1問

飲食店内で飲食をした場合は10%の消費税が課され、お持ち帰りをする場合は8%の軽減税率が適用されます。

それでは、飲食スペースを販売者自ら設置している店内で、注文した食事の食べ残しを持ち帰る場合、この持ち帰る分の食事については軽減税率が適用されるでしょうか。

答え:軽減税率は適用されません。

解説

10%か軽減税率8%かの判定時期は、「飲食料品を提供する時点」となります。

つまり、店内飲食の食事として提供されたものを持ち帰ったとしても軽減税率は適用されず、10%の消費税が課されることになるのです。

第2問

食品販売業者が販売する食料品は基本的に8%の軽減税率が適用されますが、食品以外の商品には10%の消費税が課されます。

それでは、食器として再利用できる容器(本体価格100円)に、プリン(本体価格500円)を入れて「本体価格600円」で販売した場合、軽減税率は適用されるでしょうか。

答え:軽減税率が適用されます。

解説

この場合の消費税の適用については、「一体資産」という考え方を基に判定します。

一体資産とは、食品と食品以外の商品がセットで販売されており、その一つの商品に係る価格のみが提示されている商品のことです。

この一体資産を販売する場合、以下の2つの条件を満たしている場合に限り軽減税率8%が適用されることが認められています。

  • 一体資産の販売価格が税抜1万円以下であること
  • 一体資産の価格の内、食品の価額の占める割合が3分の2以上であること

上記例題の場合、販売価格が税抜600円〔①税抜1万円以下を満たす〕で、プリン(食品)の本体価額が税抜500円〔②食品の占める割合が3分の2以上を満たす〕であるため、軽減税率8%が適用されることになるのです。

※国税庁のホームページに「消費税の軽減税率制度に関するQ&A」(令和元年7月改定)等が掲載されました。軽減税率制度に関するものが19問、適格請求書等保存方式(インボイス制度)に関するものが4問、計23問が新たに追加されております。

茨城本部 星


軽減税率

恐らく、令和元年10月1日から施行されるであろう消費税の軽減税率ですが、本ブログでは実際のケーススタディを考えて一問一答方式にしたいと思います。

第一問

食品販売業者が販売する食料品は基本的に8%の軽減税率が適用されます。

もちろん、この場合の食料品は人が食べることを前提になっています。 

では、食品として販売されている野菜や果物を消費者が家畜の餌にする目的で購入する場合、または神様のお供え物に使用するのみの目的で購入された場合は軽減税率が適用されるのでしょうか?

答え:軽減税率は適用される。

家畜の餌は人が食べるものではない。お供え物は神様が食べるものだから軽減税率が適用されないと考えた方・・・ハズレです。

解説

食品の軽減税率が適用されるか否かは、販売業者が何を目的として販売しているかによるもので、消費者がどのような目的に使用するかは関係ありません。 

 これを本問に当てはめると、販売業者が食品として販売していることからその目的は人が食することを前提としています。なので、消費者が家畜の餌やお供えものに使用したとしても、販売者側の目的が食品としてならば軽減税率が適用されます。

第二問

飲食店内で飲食した場合は10%の消費税が課され、持ち帰ったら8%の軽減税率が適用されます。

では、公園でクレープの屋台販売をしているとします。Aさんは屋台でクレープを購入し、屋台の目の前にあった公園のベンチでクレープを食べました。この場合Aさんは店内の飲食とみなされて10%の消費税を課されるのでしょうか? 

なお、屋台販売者は公園のベンチの使用許可を得ていません。

答え:8%の軽減税率が適用される。

屋台の目の前にあったベンチでクレープを食べたのなら店内飲食だと考えた方・・・ハズレです。

解説

店内飲食とみなされるためには、飲食スペースを販売者自ら設置した場合、あるいは他の者の飲食スペースの使用許可を得ている場合です。

これを本問に当てはめると、公園のベンチは公共のもので、販売者所自ら設置したものではなく、また使用許可を得ていません。

なので、屋台でクレープを購入したAさんは、持ち帰ったクレープを公共施設である公園のベンチで食しただけなので8%の軽減税率が適用されます。

なお、フードコート内の飲食の場合は、飲食スペースを自ら設置していなくても、通常設備設置会社と販売者との間で設備を顧客に使用させることの合意がなされていると考えられるので、軽減税率の対象外となるのでご注意ください。

                            茨城本部 大河原


持分なし医療法人への移行について(後編)

 前回、認定医療法人制度改革についてその概要、全体像について解説しましたが今回はその各論についてです。

 持分なし移行にあたっては厚生労働省の認定を受ける必要があり、その認定といういわばお墨付きをもらうことで医療法人への贈与税が回避されることとなることから認定要件についての詳細に関して正しい認識が必要となります。

 第1次の認定制度で申請が進まなかった最大の理由として同族親族役員等を3分の1以下とする要件があり、今回の新たな認定制度においてこの要件が外れたことが大きな改正点となりました。

 ただし、その他の要件については前回と変更点はなく、特に多くの持ち分あり医療法人にとって最も困難な要件として「法人関係者に対し、特別の利益を与えないこと」が挙げられます。

 その例として多くの医療法人では理事長たる役員医師の社宅があるケースが見受けられますがこの場合、他の従業員社宅があるとすると賃料が同等でなければならず、社宅の場所についても、クリニックの近隣にあるといった場合は緊急時の対応のためといった大義名分がありますが、例えば埼玉にクリニックがありながら社宅が都内の高級住宅地にあるといった場合、認定をうけることは非常に困難な状況となります。この場合、理事長個人に売却するといったことを検討する必要があります。

 今までの医療法においては法人と役員の間における不動産の売買については特別代理人の選任及び不動産鑑定士による鑑定が必須条件でしたが、平成30年10月よりこれらの手続きが不要になったことから売却するといったオプションは使いやすくなりました。

 その他では「役員報酬について不当に高額にならないように定める」ことについては、特定医療法人の要件が年間報酬額が3600万円以下となっておりそれ以下であれば問題なさそうですが、それ以上だとしても不当に高額かどうかというと悩ましいところです。

 遊休財産が事業費用の額を超えてはならないという要件も意外と厄介かもしれません。通常それなりの年数にわたりクリニックを経営してきた場合内部留保が潤沢になっているケースも多く使途が特定されていない預金及び未収の保険診療報酬も遊休財産に該当することから年間の事業費用くらい超えてしまう内部留保があってもおかしくありません。

 ただし、この場合は減価償却引当特定預金といって通常の預金の一部の使途を帳簿上特定させることで遊休財産から外すことが可能となりますので検討する余地はありそうです。

 認定申請期限まで残すところ1年弱となりましたが、当然のことながら必ずしも持ち分なしへ移行することがドクター一族及びその医療法人にとっての最良の相続対策になるとは限りません。現在の株価を注視しながら出資持分を相続財産に含めることが得策な場合もあるかと思いますので十分に検討してから判断されることが求められます。

  埼玉本部 菅 琢嗣


持分なし医療法人への移行について

 令和2年9月30日は、認定医療法人制度改革にとってひとつの重要な期日となっております。

 この日までに厚生労働省による認定医療法人としての認定を受けることによって、将来発生することが想定される医療法人への出資持分(株式会社でいうところの株式のようなもの)に対する多額の相続税の心配がなくなるかもしれないのです。

 ことの始まりは平成18年度改正医療法による医療法人制度改革で、それ以降に新設される医療法人については出資持分の存在を認めないというものでした。

 医療法では医療機関の非営利性が大原則で本来は医療法人の残余財産の帰属先が出資者個人であってはならないことから、このような制度改革が行われましたが、それ以前に設立された医療法人の出資持分については「当分の間」はそのまま黙認するが持分なしへの自主的な移行を促すといった曖昧なものでした。

 そこで平成26年10月1日から平成29年9月30日の間に一定の要件を満たせば持分なし医療法人への移行を認定するという認定制度が始まったのですが、如何せん認定要件のハードルが高く、将来の相続税が安くなるのはよいが例えば同族親族役員等を3分の1以下としなければならないといった医療法人の経営の根幹にかかわる認定要件が盛り込まれておりこのようなことが足かせとなり厚生労働省の思惑どおりに移行が進まなかったのが現状でした。

 そこで今回認定の期限を平成29年10月1日から令和2年9月30日まで3年間延長してさらに認定要件を大幅に緩和することによって持分なしへの移行がかなりの法人で進むのではないかと期待されております。

 そもそも持分なしへ移行する行為自体は定款を変更する程度のことなのですが、なぜその行為にわざわざ厚生労働省の認定といういわばお墨付きをもらわなければならないのかというと、そこに贈与税の問題があるからに他ならないのです。

 通常贈与税は個人に課税されるものなのですが、医療法人の出資持分を出資者全員が放棄した場合、なんと医療法人に贈与税がかかることとなるのです。

 だからこそ多くの医療法人は持分なしへの移行に慎重にならざるを得ないのかも知れません。だからといってこのまま無策でいると多額の相続税が、移行すれば多額の贈与税が・・・といったジレンマに陥っていた多くの持分あり医療法人にとっては千載一遇のチャンスであり、且つそれはファイナルアンサーになるのかも知れません。

 具体的な認定要件の緩和については次回へと続きます。

   埼玉本部 菅 琢嗣


消費税率10%時の「特別特定取得」に該当する場合の住宅ローン控除の特例

令和元(2019)年度税制改正では、消費税率の引き上げに伴い住宅に対する税制上の支援措置として、個人が住宅の取得等をして令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間に居住の用に供した場合に、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(住宅ローン控除)の特例が創設されました。この特例を受けるには、消費税率10%時における
「特別特定取得」に該当し、確定申告書に一定の添付書類が必要となります。

この特例は、個人が住宅の取得等で特別特定取得に該当するものをし、かつ、その住宅の取得等をした家屋を令和元年10月1日~令和2年12月31日までの間にその者の居住の用に供した場合には、適用年の11年目から13年目までの各年における控除額として、税額控除の適用を受けることができます。

適用年の11年目から13年目までの各年の住宅ローン控除額は、(1)一般住宅の場合、(2)認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の場合、(3)東日本大地震の被災者等に係る住宅取得等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例の対象となる再建住宅の場合の各区分に応じて、次の①または②のいずれか少ない金額を控除することができます。

①  住宅借入金年末残高×1%((3)の場合は1.2%)

②  建物購入価格×2%÷3年

住宅借入金残高及び建物購入価格については、上記(1)の場合は4,000万円 (2)(3)の場合は5,000万円が限度となります。また、適用年の1年目から10年目までの10年間は、従来の住宅ローン控除を受けることができます。
ここでいう「特別特定取得」とは、住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等相当額が、消費税及び地方消費税の税率引上げ後の10%の税率で課されるべき消費税等である場合の住宅の取得等をいいます。

なお、特別特定取得に該当する場合には、特定取得と同様、確定申告書に工事の請負契約書の写しや売買契約書の写し等で特別特定取得に該当する事実を明らかにする書類の添付が必要になります。

東京本部 佐藤 芳明


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