参院選も終わり、まだまだ分からないと言っていた消費増税もほぼ決定になってきました。
消費増税、軽減税率で外食産業が注目されがちですが、一番混乱するのは小規模農家かもしれません。
昨年12月 当税理士法人発行のメルマガ「得する税務・会計情報」でもお伝えしたように、農協に全量おろしている農家などの場合、委託手数料は30%前後掛かりますが、これを差し引いた収入金額で計算してもいいよという制度があります。
言うまでもなく、売り上げ1000万以上から消費税課税事業者になり、納税義務が発生しますから、この制度により、実際の売上は1000万以上でも委託手数料を引くことで課税対象になっていなかった農家も多いと思います。
これが、10月から廃止され、総額での処理が義務付けれらます。
かわりに、簡易課税での仕入控除率はいままでの70%から80%に上がります。 仕入れが10%になるための対策になります。
さて、小規模農家にとっての影響はこれだけではありません。4年後から適格請求書等保存方式(インボイス制度)が始まります。
この制度は消費税課税事業者だけが適格領収書発行事業者の番号を取得することができ、この番号の入った領収書を発行することによって購入者は消費税の仕入れ税額控除ができる制度です。
つまり、消費税課税事業者にとっては、消費税を納めていない農家から購入すると、本来引けるはずのものが引けなくなります。購入価格で8%の差があるとなると、販売先が一般消費者ではなく、事業者がメインの場合、たとえ売上げが1000万に満たなくても課税事業者を選択する場合も考えられます。
ただ、農協に委託販売する場合は、インボイスの発行が免除される特例があります。つまり、直接買えば、消費税は引けないが、農協を通した委託販売の場合は消費税を引くことができます。農家からお米を集めているコメ卸業者にとってはびっくりな話ですが。
ただし、農家は無条件委託方式(つまり、売値も、出荷時期も出荷先の条件もつけない)で平均価格(一定期間に出荷した同種・同品質の平均価格)で処理することが条件です。
総額の売上げが1000万前後の小規模農家にとっては、課税事業者になるのか、その場合、簡易課税を選択するのか。また、委託販売を選択するのか、自ら事業者への販売や消費税の関係ない一般消費者だけの販路を選択するのか切実な問題となります。
京都本部 吉原